本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、産婦人科・心療内科・かかりつけ医へご相談ください。 本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
この記事を書いた人:Bruno 理学療法士/PTパパはまだレベル1 運営者 産後リハビリに携わってきた理学療法士として、また一人娘を育てる新米パパとして、妻と一緒に産後の日々を過ごしています。
「なんか変」と思ったのは、娘が生まれて2週間後のことだった

娘が産まれて2週間が経ったころ、妻の様子がなんとなく気になり始めました。
笑顔が減った、というほどはっきりしたものではありません。ただ、以前なら笑って話してくれていたことを、ぼんやりした顔で聞いている。返事はする。でも、どこかいない感じがする。
「疲れてるよな、当然だよな」と思ってそのままにしていました。
理学療法士として身体のことは多少わかっているつもりでしたが、妻のメンタルの変化にはうまく気づけていなかった。「おかしいな」と感じてから、ちゃんと向き合うまでに時間がかかってしまいました。
この記事は、あのときの自分に届けたいと思って書いています。「なんか変」と感じているけど、どう動いていいかわからないパパへ。
産後うつは「特別なこと」ではない
まず知っておいてほしい数字があります。
産後うつは、出産した女性の約10%に起こると言われています。10人に1人です。決して珍しいことではありません。発症のピークは産後3か月以内で、特に産後2〜4週間の時期は心身ともに不安定になりやすいと言われています。
日本産婦人科医会の資料でも、産後うつはホルモンバランスの急激な変化、睡眠不足、身体の痛み、育児への不安などが重なって起きると説明されています。「気合いが足りない」「弱い人がなるもの」ではまったくありません。
夫として知っておくべきことは、「産後うつは誰にでも起こりうる」という事実と、「早く気づくほど回復が早い」というシンプルな事実です。
「EPDS」ってなに?診断ではなくスクリーニングです
産後健診などで「EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
EPDSは診断ツールではなく、スクリーニング(ふるい分け)のためのツールです。「この点数だから産後うつ」という使い方は正しくありません。「詳しく確認する必要があるかどうか」を判断するための目安として使われるものです。
点数が高くても産後うつでないこともありますし、点数が低くても見逃されるケースもあります。EPDSは入口であって、そこから専門家がしっかり話を聞いて判断します。
夫として覚えておいてほしいのは「EPDSが高かったから即アウト」ではなく「専門家に相談するきっかけとして使う」という位置づけです。
夫が気づきやすいサイン
日本語版EPDS-Pの研究(父親が気づきやすいサインに関する研究)も参考にしながら、実際に夫の立場から観察しやすいサインを整理します。
笑顔が減った
以前なら笑って話していたことが、反応が薄くなった。赤ちゃんを見てもぼんやりしている時間が増えた。「疲れているだけ」と片付けてしまいやすいですが、笑顔の変化は大切なサインのひとつです。
涙もろさが増した
些細なことで涙が出る、テレビを見て泣いている、自分でも理由がわからないまま泣いている——こうした状態が続く場合は注意が必要です。「ホルモンのせい」と思いたくなりますが、2週間以上続く場合は様子見だけにしないでください。
自分を責める言葉が増えた
「私がちゃんとしないから」「お母さん失格だ」「もっとうまくできるはずなのに」——こうした言葉が日常的に出てくるようになったら、自責感が強まっているサインです。声のトーン、言葉の選び方に注意して聞いてみてください。
睡眠の変化
赤ちゃんが寝ていても眠れない、夜中に目が覚めてそのまま眠れない、逆に日中も起きられないほど眠い——産後の睡眠障害と産後うつには強い関連があることが、複数の系統的レビューで示されています。「眠れているか」は毎日確認できる重要な指標です。
食欲の変化
食べられない、食べることへの関心がなくなった、逆に止まらなくなった——食欲の急激な変化も見逃しにくいサインのひとつです。一緒に食事をするパパだからこそ気づける変化です。
強い疲労感
「休んでも疲れが取れない」「体が重くて動けない」という状態が続く場合、身体的な疲労だけでなく精神的な消耗が関係していることがあります。理学療法士として見ると、痛みと活動量の低下が気分の落ち込みをさらに悪化させるという関係が、複数のメタ解析でも確認されています。
「消えたい」「いなくなりたい」という言葉
これが出たときは、そのまま流してはいけません。「消えたい」「楽になりたい」「いなくなってしまいたい」という言葉は、心が限界に近づいているサインです。この言葉を聞いたら、すぐに次のセクションの相談先に連絡してください。
夫が気づきにくいサイン
外から見えにくいぶん、より注意が必要なサインもあります。
漠然とした不安・恐怖感
「何か悪いことが起きそうな気がする」「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」という強い不安が常にある状態。本人も「心配しすぎかな」と思って言いにくかったり、そもそも不安が当たり前になってしまっていて気づいていないことがあります。
「最近、何か怖いとか心配なこと、多い?」と穏やかに聞いてみることが有効です。
「もう無理」という対処できない感覚
育児の課題に対して「どうすればいいかわからない」「何をやっても無駄な気がする」という無力感。外から見ると「頑張っている」ように見えても、本人の中では「もう限界」という感覚が積み重なっていることがあります。
「最近、しんどいこと多い?」という一言が、妻が話すきっかけになることがあります。
睡眠・痛み・活動量の低下は「心」にも影響する
理学療法士として強調したいことがあります。
睡眠不足、産後の身体的な痛み(腰痛・腱鞘炎・会陰部の痛みなど)、育児で外に出られない活動量の低下——これらは単なる身体の問題ではなく、気分の落ち込みと深く関係しています。
産後の睡眠障害と産後うつの関連は複数の系統的レビューで確認されており、慢性的な痛みと産後うつの関連もメタ解析で示されています。また、産後の適度な運動が抑うつ症状の軽減に効果があることも、複数のメタ解析が報告しています。
つまり、「身体を楽にすること」は「心を守ること」でもあります。妻の腰痛を減らす、夜の授乳を代わる、外に少し出られる時間を作る——こうした日常の行動が、メンタルヘルスの維持に直接つながります。
夫が今すぐやるべき3つの行動

① 観察をベースに声をかける
「大丈夫?」は答えにくい質問です。「大丈夫じゃないとわかってて聞いてる?」「また心配かけてると思われたくない」——そう感じてしまうことがあります。
代わりに、観察した事実を伝えてから聞いてみてください。
「最近、ご飯あまり食べてないな、と思って。食欲ない感じ?」 「昨日夜中に起きてたよね。眠れてる?」 「なんかしんどそうに見えるんだけど、どこかつらい?」
「見てるよ」という安心感が、妻が話してくれるかどうかを左右します。
② 夜の担当を具体的に引き受ける
「何かあったら言って」ではなく、「今夜の22時〜2時は俺が見る」と具体的な時間を決めて引き受けてください。
睡眠の質と量を確保することは、産後うつの予防・回復に直接関わります。「担当を決める」という具体性が、妻が安心して眠れるかどうかを変えます。
③ 受診予約・相談先への連絡を代行する
「病院行った方がいいと思う」と言うだけでは、疲れ果てた妻には動けないことがあります。「予約しておいたよ」「保健センターに電話しておいた」という形で代行することが、実際の受診につながります。
受診を勧めるときは「異常だから」ではなく「一緒に確認したいから」という言い方が有効です。
妻が休みやすい環境を作るために役立ったもの
産後うつの回復や予防において、「治療」と同じくらい重要なのが「休める環境を作ること」です。
医療は専門家に委ねながら、夫にできるのは「家の中で妻が少しでも楽でいられる環境を整えること」です。商品は治療ではなく、あくまで環境調整の補助です。ただ、道具ひとつで身体的な負担が減り、その分だけ休める時間が増えることは確かです。
妻が休みやすい環境を整えるために 我が家で実際に使ってよかったものを PT目線で紹介します。
【授乳の姿勢を整える】 抱っこ紐と同じエルゴベビーの 授乳クッションを使っています。 ベルトで腰に固定できるため 授乳中にずれにくく、 適度な硬さで沈み込まないのが PT視点でも◎なポイントです。
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【抱っこの腰・肩への負担を減らす】 我が家で使っているのは エルゴベビーのオムニブリーズ。 ウエストベルトが腰への荷重を分散してくれるので 長時間の抱っこでも肩だけに負担が 集中しにくいのが特徴です。 パパでもサイズ調整がしやすく 夫婦兼用で使っています。
→ エルゴベビー OMNI Breeze https://amzn.to/4d1gAvh
【音から離れる時間を作る】 赤ちゃんの泣き声や家事の音が 1日中入り続けることで 自律神経は休めない状態になります。 パパが見ている10〜20分だけ 音から離れる時間を作るだけで 身体の緊張がほぐれます。 我が家で使っているのはこちら。
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⚠ パパが見ている時間限定で。 外音取り込みモードの活用もおすすめです。
【眠れる環境を整える】 赤ちゃんが寝たら ハーブティーを一杯、アロマをセットして横になる。 このルーティンが妻には合っていました。
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⚠ ハーブティーは授乳中の成分確認を忘れずに。
緊急のときはここに連絡してください
妻が「消えたい」「死にたい」という言葉を口にした場合、または自分を傷つけようとしているように見える場合は、すぐに以下へ連絡してください。
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
産婦人科:出産した病院に電話するのが最もスムーズです
心療内科・精神科:「産後のメンタルで相談したい」と伝えれば受け付けてもらえます
「大げさかな」と思わなくていいです。相談して「問題なかった」で終わるなら、それが一番いい結果です。
まとめ
産後うつは10人に1人が経験する、決して珍しくないことです。早く気づいて早く動くほど、回復の可能性は高まります。
夫にできることは「治すこと」ではありません。「気づくこと」「一緒に動くこと」「休める環境を作ること」です。
「なんか変」と感じたあの直感は、正しいことが多いです。その感覚を、観察と行動に変えてください。
免責事項 本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の個人に対する診断・治療の提供ではありません。産後うつの疑いがある場合は、産婦人科・心療内科・かかりつけ医など専門家へご相談ください。最終的な判断はご自身と専門家の間で行ってください。
参考文献
- 日本産婦人科医会「産後うつ病について」
- 日本精神神経学会 周産期メンタルヘルス委員会関連資料
- 産後うつ病診療のコンセンサスガイド(日本版)
- Dørheim SK et al. (2009). Sleep and depression in postpartum women. Sleep, 32(7), 847–855.
- Vigod SN et al. (2010). Prevalence and risk factors for postpartum depression. BJOG, 117(1), 5–13.
- McCurdy AP et al. (2017). Effects of exercise on perinatal depression. BMC Pregnancy and Childbirth, 17(1), 200.
- Horibe M et al. (2021). 日本語版EPDS-P(父親用)の信頼性・妥当性の検討. 周産期メンタルヘルス研究

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